Sunday, November 22, 2009

66 ライフ・イン・メイドンヘッド その2

 ここに移り住む際にどういうところを探すかというのがひとつの課題であった。いままでひとりで住んでいたのだが、いわゆるひとりで使えるフラットやスタジオ形式の家だと高くつく。田舎だから安く住めると思ったのは甘く、ロンドン並みの物件価格なのだ。一軒の家に何人かが住んでいて台所や浴室をシェアするという形式はこの国に多い。独立のフラット(アパート)だと家賃がけっこうして、しかも水道代、電気代などが別。シェアだと全部込みでしかも安い。田舎に行くのにロンドン並みの家賃を払うんだったら意味ないわよ、という友人の一言でわたしは多少窮屈でもシェアを選んだ。
 かくてシェア生活が始まったのだ。
 はじめから驚きの連続。大家は別のところにいて同じ家には住んでいないのだが、入る前に何人とシェアなの、と聞くと4人という。
 セミデタッチドハウスの2階建ての家で、広い庭もある。グランドフロアにキッチンとユティリティールーム。ここに食事ができるテーブルと椅子、洗濯機がおいてある。わたしの部屋はグランドフロアの奥、庭に面したユティリティールームの隣である。ファーストフロア(日本式で2階)にはさらに部屋とバスルームがある。玄関を入ったところにもうひとつトイレがある。
 台所とバスルームはシェアなので、今までのように自分が使いたい時間にいつも使えるわけではなく、まあ、我慢だなあ、と思っていた。
 初日、引越しのあとは外食し、寝る前にシャワーを浴びるかと上に行くがドアが5つあり、全部閉まってる!どれがバスルームのドアかわからないのである。全部開けてまわるわけにはいかないし。しばらくして度々様子を見に上に行くがドアが開いている気配はない。疲れていたしあきらめてその夜はシャワーも使わずに寝た。シェアの現実を思い知らされた。
(のちに発見するのは、使ってなくてもドアを閉めるやつがいて、閉まっているから使っているとは限らないと判明。以降閉まっていてもとりあえず開けてみることにする。とけっこうだれも使ってないのに閉まっているときが多いのだった!あのときもどのドアさえわかれば空いてたのかも??)
 しかし、階上のドアは5つある。1つがバスルームだとあとの4つは部屋のはず。するとグランドフロアに2部屋あるから、全部で部屋は6つ。わたしを入れて6人でシェア。バスルームはたった一つですぞ。こっちのひとはシャワーを朝浴びるから夜は使うひとが少ないだろうとたかをくくっていたがけっこう夜使うやつもいる。それに階上の住人はトイレにもバスルームを使うのだ。わたしの部屋はグランドフロアなのでいちいち階段あがって見に行かないと空いてるのかどうかわからない。
 反対に台所はわたしの部屋から一番近いのでアドバンテージ。おまけにここの住人はほとんど台所で料理をしないようだ(いつ、何食ってるんかね)。キッチンはけっこう広く、ガスレンジでオーブンもグリルもある(うふ)。料理好きのわたしとしてはけっこううれしいかも。金曜日の夜最初に部屋を見に来たときもだれもいなかった。引越しして最初の2週間は夕食時にキッチンを使うのはわたしひとり。
 ここの住人。はじめに会ったのが中国系のおにいちゃん。ヴェトナム人で近所のネイルバーで働いているらしい。同じアジア系の女の子といっしょに住んでる。いっしょに住んでるぅ?ひとりプラス。
 東欧系の女性。きれいな顔してるのに超ぶあいそ。台所で会ってもにこりともせん。毎日のように洗濯機まわしてる。もひとり東欧系の女性がいるが、いっしょの部屋に住んでるのか、友達なのか別の住人なのか、不明。この女性グラスを4つ持って降りてきてたなあ。友人が遊びに来てたのか。。。
 引っ越してはじめての週末。土曜日にまた新たな女性登場。ハローととってもフレンドリーなのはいいのだが、台所の片付けの慣れた様子に思わず『あなたここに住んでるの?』と聞いてしまった。すると『ああ、わたしはディビッドのガールフレンドで週末だけ来るのよ、ドントウォーリー』、ドンと悪い、っつわれてもなあ。週末はプラス1。
 このディビッドというのが典型的イギリス人男性。毎日主食はポテト。ジャケットポテトにするような大きいポテトをレンジでチンしたあと、オーブンに入れておき、延々焼く。今日もポテト明日もポテト。トッピングもいつも同じようなもので、ツナ缶にチーズとマヨネーズ。
 前出の東欧系(ポーランド人と判明)美女も週末かときどき彼氏が来るようで、これまたプラス1(余談、この彼氏ってのがいかついアジア系のやくざっぽいおっさんなのさ。およそ美女と野獣ってとこ)。
 やれやれ、まだいる?グランドフロアの玄関横のドアにはだれか住んでるんだろうか、と思っておりますとやっぱりいました。水曜日にインド系の女性が。ニューカッスルの両親のところにホリデーで行ってて留守にしてたのよ、ここに2年住んでるの。やれやれ彼女はひとりらしい。しかし友達とかがひっきりなしにやってくる。
 となると、平日6部屋7人で、週末になると9人になるってことよ。9人!!!オ~マイガッ。気が遠くなりましたわ。一瞬。
 そのあとの週末ティーンエイジャーと思われる若者の団体がやってきて、台所でうどんをすすってたわたしに『ハ~イ』『ハ~イ』『ハ~イ』。みなにこにこ笑って挨拶してくれるの。ひとり男の子はいったんひっこんだのにまたやってきて『ハイ、ぼく、テリーのともだち。よろしくね』と握手。めずらしいんか、わたし?しかしテリーフー??(テリーてだれや?)の心境であった。こいつら5人今晩ここに泊まるんやないやろねぇ。
 はじめの2週間はずーっと隣で洗濯機がまわっていた。それも夜、夜中まで。みな働いていると言ってたから平日の夜中にしか洗濯できないのよね。しかしうるさいわ。と思いつつも寝たが翌日朝の7時ごろからまた洗濯機の音で起こされた。とくに終わりのころのスピンのだだだだっと言う音がうるさいんだよね。まあ最低6人もいりゃ、ひとり一回でも毎日かかるよなあ。わたしは週末しか洗濯せんのだぞ(あ、しかし洗濯機が空いてたら、という条件付だなあ、これも)。そう、週末もフル回転なんですよ。洗濯機くん。
 毎夜就寝時に洗濯機の音を聞きながら寝てますと子守唄のように聞こえてくるから不思議(聞こえるか、そんなもん)。しかし使うのはいいのだが終わってもそのままにしておかないでほしい。次が待ってんだからね。朝かけといてそのまま出かけてしまってる気がしてしゃーない。ひとごとながら気になるやん。洗濯室はわたしのアドバンテージですから、終わったらすぐ使いますよん。
 共同生活の教訓1)洗濯機、自分がまわしてると思えばうるさくない 
 また掃除のおばさんが週に一回くるの。台所とバスルーム、階段、廊下と共有の場所は掃除してくれる。が、これまた大変。この方、何でも捨てるのよ。一度バスルームにおいてたコンタクトレンズケースを捨てられかけた。危機一髪で気がつき、聞いたら『中に何も入ってなかったし2週間くらいずっとおいてあったから捨てたわよ』なんで~ぇ!!ごみに見えるか?コンタクトレンズのケースが!!中身確かめるか??(ふたにレンズがはりついていた模様)掃除するのに邪魔かもしれんが、なんで?そのときはゴミ箱まであさり、やっと取り返しましたわ。おばさん、しらっとして『そこに捨てたわよ、ごみ袋の中』勝手に探せといわんばかり。捨てたんはだれや!
 きれい好きの?わたしは台ふきがないので自分で使い捨てのダスターを買って使っていたのだけど、それも1週間ごとになくなる。いくら使い捨てったってもう少し使えるよな。どうもこのひとが捨てたか持っていったと思われる。
 共同生活の教訓2)共通の場所には何もおくべきではない
 以降、金曜日の晩には捨てられたら困るものはみな自室へ避難させました。自己防衛するっきゃない。
 住人はクリーナーのおばさん含め人間ウォッチングと決め込み、与えられた自己鍛錬、人生修行と考え日々精進するのだ。ま、ほとんど会わないしね。台所で挨拶するくらい。しかし、共同生活はなかなかおもうようにはなりませぬ。たべたあとの食器は置きっぱなし。これ、つけとかんとあとで汚れが落ちひんよぉ。。。(おばさん)。テーブルは勝手に動かす。椅子をテーブルの上に置くのはやめてほしい。食べ物のせるんだから。自分だけの台所じゃないからね、わたしは自然乾燥派で洗ったあとは乾くまでおいときたいのにそれもままならぬ。りんごをかごに入れておいてたらいつのまにかなくなってた。いくら掃除のおばさんが来るったってね、日々の掃除は自分でしなくちゃ。台所のシンクを掃除したり、電子レンジの中を掃除してるのはおそらくわたしだけであろう。どうせならきれいに使いたいもんねえ。汚いより。ああ、仏の心境?日々鍛錬の毎日なのだ。

2008年10月19日          
© Mizuho Kubo , All rights reserved…..October, 2008

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