Saturday, November 21, 2009

22 カーニバルだからカーニバル

 2月下旬から3月にかけてヨーロッパは Carnaval(スペルチェックが入ってるけどこれはフランス語!)の季節です。  カーニバルというのは、基本的には「春の訪れ(日本で言うと啓蟄ですかね)」を祝う行事です。ヨーロッパ各地で規模の大小はありますが、復活祭の前にいろんな催しがあります。有名なのは水の都ヴェネチア(英語ではベニス)のカーニバル。仮面をつけて中世の衣装に身を包み、幻想的な海と建物が貴方を中世に戻して一大イベントとなります。サン・マルコ広場は中世の舞台と化します。
 ロバート・プラントのソロになってからのビデオクリップに登場してましたなあ。どのアルバムのどの歌だったか忘れたけど。きのう HMV*CD をチェックしたけどわかんなかったわい。幻想的な衣装と雰囲気が歌にあっていて印象的でした。
 しかし、このわたしでも?こちらに来てからヨーロッパのカーニバルで行ったことのあるのはニースのカーニバルだけです。
 イギリスにはないのよね。なぜかしら。
 カトリックの国ではキリストの復活祭(イースター)前の日曜日を除く40日間を断食して肉食を絶つ習慣から、その前に大いに飲んで食べ陽気に遊ぼうと祭りが催されることになったらしい。謝肉祭とも言いますね。ひごろ食べれる肉に感謝せい、ということなのでしょうか。これがカトリックの習慣とすると、カトリックでないイギリス人には考えつかなかったのかしらん。ヘンリー八世の前はカトリックだったのになあ。カーニバルの習慣まで、イギリスは他のヨーロッパ諸国と違う、と決別したのでしょうか。
 イースターはキリストの復活の日ですが、春分の日のあとの最初の満月の次の日曜日と決まっているので、暦により日程が変わる移動祝祭日となります。日本人にはなじみが少ないですがこれも外国に住んでいるものからすると、文化で基礎知識ですね。
 ヨーロッパにあってイギリスにないものと言えば宗教的祝日。これも数がちがう。イギリスのいわゆる、オフィスが休みとなる国民的祝日はもともと数えるほどしかなく、宗教的ホリデーはクリスマスとイースターのみ。年二回の日本の盆と正月って感じです。最大重要なクリスマスホリデーが終わると、イースターのお休み。5月に2回月曜日がバンクホリデーで三連休となり、それが終わると8月のバンクホリデーまでなく。それから冬になるまで、クリスマスまで祝日らしい祝日はなく、イギリス人はひたすら働くのです(ほんまかいな)。
 ヨーロッパではそれに加え、顕現節(1月6日)、聖母被昇天際(8月15日)、万聖節(11月1日)だの、追加項目が増えますね。メイ・ディもほかのほとんどのヨーロッパ国が祝日なのに休みじゃないんです、この島国は。革命記念日とか、独立記念日もないよなあ。建国記念日ってのもない。革命も独立もしとらんからなあ。しいて言えば女王陛下の誕生日だけど、ほんとの誕生日と公的なのと2つもお持ちなのに、どちらも祝日ではない。よっぽどニュートラルな国なのね、イギリスって。
 子供たちや学生さんはいいですね。クリスマスが終わると2月後半が学校のハーフタームのお休み。そしてイースター休暇。夏休み。10月にはまたハーフタームの休み。で、クリスマス休暇となる。休んでばっかやん。いつ勉強すんの?
 大使館なんてさ、本国日本と在留国であるこのイギリスの両方の祝日が休みなんですもの。いいわね。たくさん休日があって。ほとんど重なってないから倍の数、休める。でも、職員も他のヨーロッパ赴任のひとに比べてイギリスは休日が少ない、とひがんでいるかもしれませんね。そんなこと思うのはわたしくらいか?
 では、余談はこのくらいで、ヨーロッパのカーニバルを並べてご紹介しましょう。

<マントン Menton のレモン祭り>
 フランスはコートダジュールの漁村の雰囲気が残る町。ニースから列車で1時間ほどのところにあるこの町最大のイベントがこれ。2月にレモン、オレンジの実で作られた人形や馬が町をパレードするという。ニースやモナコなどに比べるとスノッブさも高級感も薄れるだろうが、その分、親しみやすそうな感じ。これって来年の課題かなあ。

<バレンシア Valencia の火祭り>
 これをここに入れるべきなのかどうかは迷いますが、でも入れてみましょう。
 スペイン3大祭りのひとつ。3月中旬に行われるので、カーニバルというのではないかも。スペインの祭りに詳しい方、ちゃちゃを入れていただいてもけっこうです。
 人形をつくって、焼きます。一種、魔女狩りっぽい? ハリボテや特大サイズの人形もあるそうです。焼いてしまうためにつくるってのも、もったいない気がするが。この日バレンシアの空は赤く燃えるそうです。
 この他に、スペイン各地でもカーニバルが行われるようです。

<バンシュ Binche の「ジル」祭り>

Before

 ベルギーはブラッセルから南へ列車で1時間ほどのところにある小さな町バンシュ。
 1月終わりくらいからブラスバンドの演奏などが始まるようですが、メインは3月始めの「ジル」の踊り。「ジル」とは16世紀のカール5世(スペインのカルロス1世)の妹マリアがスペインのペルー征服を祝って開いた舞踏会だそうです。インカ帝国の王侯に扮したダチョウの羽飾りとなぜかメガネにひげの仮面をつけた踊り手たちが金貨をばらまくそう。今は果物のオレンジがその代わりにばらまかれるとのこと。なんで、ベルギーでスペインでインカやねん。というところですが、そのへんはやはり、ヨーロッパってひとつなのよねん。ちよっとこれ見てきますから。3月の第一週目の週末。
 フランス語で Mardi Gras (マルディ・グラ)とはイースターの40日前の火曜日。英語で Shrove Tuesday、懺悔の日と訳されます。 翌日が灰の水曜日(Ash Wednesday )で、この日からレント(断食)が始まるので、おまんまをまっとうに食べれる最後の日。
 マルディ・グラを祝うために今年はその前の3月2日の日曜日から火曜日までの3日間がバンシュ祭りのハイライトとなります。

After

 行ってきちゃいました。ご報告。
 ハイライトはマルディ・グラ3月4日でジルの踊りは火曜日だったの。日曜日にもあると思って行ったのに。「あ、それ火曜日」と祭り主催観光局の人に言われてくらくらくらぁ。何のためにロンドンくんだりから来たんやぁ。「ジル」を見るために行ったのに。それがなければ祭りと言ってもただの田舎のカーニバル。昼頃村の駅に到着し、グラン・プラースめざして行くと、市役所の前の広場に村のひとたちが集まってパーティ気分。5-6人のグループがそれぞれの趣向をこらしたいでたちで太鼓の音にあわせダンダンダダダ~ンと言う感じで、ダンスをしています。
 ダンスというより、足踏み。手をつなぎ、太鼓にあわせて丸く踊るのです。黒地に黄色のE マークの看板を持って踊っているスーパーマンならぬ、ユーロマングループ。ハリボテのシャンペングラスとシャンペンボトルをトレイにくっつけて踊っているカフェのギャルソン風の一団。えらいごつい女性やなあ、と思いきや、男性たちがかつらに白いドレスに白いレースのパラソル付き、の一団。中世の僧侶ふう、タロットカードの「さかさ男」のトランプを着たおとこども。巨大イースターエッグの看板を持った毛深い「くま」おとこたち。よぉっし、ことしはこのテーマで行こうぜって決めるのかしらね?各グループにそれぞれ太鼓たたきのミニのブラバン(ブラスバンド)付き。
 さて3時半から村の有志参加のパレードが始まります。鉄道駅から道路をずんずんとすごいゆっくり、元気な太鼓にあわせ主に学校休みの子供たちが、王子様、プリンセス、天使、ピエロ格好で行進です。親が横にふつうの服装でついてくるところがいい。あいにくの雨模様で、「も~やだ、ぼく。帰りたい」っつう顔の子もいました。
 結婚式とかでも使われる細かい紙ふぶき(コンフェッティ)を撒き散らすのが習慣らしく道路、カフェの中、連れのコートの頭のフードの中。紙ふぶきだらけ。色とりどりの。
 村立マスク(仮面)博物館で、バンシュの祭りを含むベルギー各地のカーニバルの展示と、世界各国の仮面展示がされていて、日本のお能の面も飾ってありました。
 メインイベント「ジル」の実物を見ることの出来なかった友人は、本日火曜日、それを見に日帰りベルギー旅行にまたしても出かけました。執念。
 祭りの最後は夜中に花火があがってカーニバルの宴(うたげ)も終わるようです。
 わたしは「ジル」のイラスト付きバンシュ製ベルギービールをおみやげに買いました。

(余談)

<ヴェネチア Venezia のカーニバル>
 2月後半から約2週間です。
 冒頭で少し触れたように、ここのカーニバルは伝統的方式にのっとり、貴族の即興劇がもとになったとも言われるだけあって仮面をつけて着飾ります。一種独特、廃退的な雰囲気さえただよう。無表情な仮面と対照的なヴィヴィッドな色あいの衣装。おとこかおんなかさえも仮面の上からはわからない。この時期ヴェネチアに来るひとはみなカーニバル劇を演じている俳優や女優のよう。海と運河と教会。サンマルコ広場とゴンドラ。ヴェネチアにしかない自然と人工の舞台を背景にこのときだけここにいるひとたちはみな宇宙か別世界から来た異邦人のよう。
 と、まるで見てきたかのように説明するわたし。
 ヴェネチアのカーニバル・日帰りを今年ライアンエアが企画しているそうな。どんなのかわかりませんが、泊まろうにもホテルがまず取れないであろうし、ロンドンから日帰りで行っちゃうってのがすごいね。自分のところのプロダクトだけでできるし。乗せて行って、楽しんでもらって、また乗せて帰ってきて、終わり。ま、これもいいかも。参加することに意義を感じるひとはね。

<ニース Nice のカーニバル>
 ニースは何年か前に行ったのです。それを目的に。2月も中旬だったので、さすが南仏とはいえ、まだまだ風は冷たいです。日差しはさすがに、ロンドンと比べかなり明るい!強い!食べ物もシーフード三昧で、おいしかったです。余談言うと、すきっ腹の食べ過ぎか、飲みすぎか、このわたしがしばらく海岸でうなだれておりました。わたしがうなだれている横で、冬の海なのに水着でねっころがっているおばちゃんなんぞがいて、びっくり。
 カーニバルは、みんな民族衣装や中世の王侯貴族になったりして仮装をこらし、ミモザの黄色い花を撒き散らしながら行進します。有名なプロムナード・デ・ザングレ(イギリスのやつらの散歩道)の海岸沿いには特別席がしつらえてあって、お金を払って席を買うと特等席でカーニバルが観覧できるというわけです。もちろん、お席代を払わなくとも、大通りにはひととおり、一団が歩いて行きますから、張リボテが動くあとをついていってもいいわけです。ただひとが多いので、背の低いわたしなぞは、背伸びしても到底見えません。カメラもひとの頭しか取れません。わたしたちが見に行った年の一日目はプロムナード・デ・ザングレ付近に高級宿を取っていたので、空港からバスで市内に入りホテルにチェックインしようとしたらそこにカーニバル席がしつらえてあって、プロムナード・デ・ザングレをまっすぐ行けば、すぐにホテルが見つかるはずが、通れず、街中をうろうろ荷物かかえて遠回りに歩き回ったあげく、ふつうの3倍くらいの時間がかかってやっとホテルにたどり着きました。ニース!イコールおいしい食事を夢見てきたのに、飲まず食わずでチェックインしたあとに反動で食べ過ぎたので気分が悪うなったんでしょうな。遅いランチ、早すぎる夕食をエビとカニで仇討ったのに、今度は食べ過ぎで夕食を食べる元気もなく、その日は早々にご就寝。翌日は山側のシャガール美術館に行く予定が、こんどは海岸から駅へ続く道がカーニバル道となり、またまた人混みをかきわけ、ようよう到着。
 なんかまるでカーニバルに追いかけられてるみたい!参加したかなあ。
 人混みを避けて、ちょっと小道にそれると、行進からはずれた小さい男の子が中世の騎士よろしく頭に王冠なんぞ載せて、ピーターパンのような衣装を着て、腰に剣をさして、疲れて泣きそうにお母さんといっしょにたたずんでいるのを見るのもまた一興です。
 とりどりの衣装、花、楽隊、音楽、ダンス。これですね。

<リオのカーニバル>
 ブラジルの超有名、超ど派手、超人気のこれもここに入れていいですかね。確か2月だったはず。死人もたくさん出るというが。地球の反対側なので、夏なんだろうけど。たまたまベルギーのホテルのテレビでリオのカーニバルをやっていました。ど派手な衣装とリズミカルなサンバの踊り。
 これ、なんか見たことある。
 どっかで。
 そう。これってやっぱり「タカラヅカ」やで。
 一番手さんがつけてるダチョウの羽飾り風を背中からつけるやつ、ひょっとしてタカラヅカの衣装さんはリオのカーニバルからヒントを得てたりして?

 そうだ、ロンドンにもカーニバルありました。
 ノッティングヒル・カーニバル。
 その名の通り、ノッティングヒルであるのですが、これは毎年、8月のバンクホリデーのときなので、本来のイースター前のカーニバルとはちと違うかも。どちらかと言えば前出のリオのカーニバルを真似しているところがあるような。アジア、アフリカ、南米系のひとたちもハリボテや、ど派手衣装で、踊ったりミュージックしたりします。
 こちらも怪我人や、死人が出ることも。バンクホリデーというお休みにはどっかに旅行に行っていることが多いわたしは、このカーニバルはいまだ見に行ったことがござりません。なんてえらそうに。テレビで見ている限りイギリスちっくとは到底、思えませんが、カリブ系イギリス人などにはうれしいのでしょうね。なんでもありのイギリスかいな。
 やっぱりカーニバルは行って、体験しないとわかんな~い!

作者注) HMV(エッチ・エム・ヴイとそのまま発音する)
 タワーレコードやヴァージンメガストアと並ぶ?CD 音楽関係のデパートみたいな店。このごろはDVD、芸能人関係の T シャツ、本まで売っている。日本にもあったっけ?

2003年3月4日                    
© Mizuho Kubo , All rights reserved…..March, 2003

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