Sunday, November 22, 2009

28 ブラックアウト事件

 今年はふつうのイギリスの天候じゃなく、あんなに暑い暑いと言っていたのも同じ月か、と思うほど、8月終わりになって急激にまたもとのいつものイギリスの夏に戻りました。
 寒い。
 夜なんて10℃台よ。どういうこと?
 天気の話ばっかですみません。またこれだと、イラストがむつかしよなあ。たび蔵さん。ごめんね。まあ、最後まで望みを捨てずに?読んでくださいな。
 衣替え、ったって季節感、ぜんぜんない。9月、というと日本じゃ夏の終わり。暦の上では秋でしょうが、夏服でぜんぜんOK ですよね。なのに、こっちじゃ、9月はもう冬。コート着て歩いているひとの横に、タンクトップのおねえちゃんがいたりします。さすがに真夏のような、「上半身はだか、見たくないそのからだ、そのビール腹」おじちゃんとかは歩いてはいませんが。
 この間の地下鉄のベーカールー線なんて夜、暖房が入っていましたわ。
 イギリスのおうちは冬はセントラルヒーティングがあって外は悲壮に寒いのに、家の中は天国と地獄ほど気温差のある、あったかぁい、のがふつうですが、この中途半端な時期、困りますねえ。まだヒーターを入れるほどではないが、入ってないから、けっこう寒いの。夜と明け方なんて10度以上下がりますからね、昼間の気温から。大家のところでしか暖房調節できない我が仮(借り)家はつらいです。
 先日つい、湯たんぽいれちゃった。おはつ。湯たんぽ。これが優れものでしてね。電気あんかじゃなく、ほんとに「湯たんぽ」なの。英語でHot Water Bottle と言って、薬局などに売ってます。カバーがついてたりね。沸騰したお湯をタンクに入れ(あまり熱いお湯を入れると中の鉄に良くないというひともいるが、沸騰したてのを入れとくと朝まで充分にあったかい)、ねじ式の蓋を閉めてできあがり。それだけ。すごく原始的かつシンプルではあるが、これがいい。
 日本じゃ、むしろ、熱が出たときの熱さましに、氷を入れて氷嚢として使うことが多いのでは。こちらではベッドをあっためるのに使います。
 8月終わり、ロンドンでも大停電事件がありました。その前にニューヨークを含むアメリカ・カナダ北海岸で大規模に電力が止まって、こちらではブラックアウトとして報道されていました。そのときに「イギリスで同じことが起こったらどうなるか?」なんて、新聞、テレビでやってたのに何も学習しとらん。やっぱり兄弟の後追いするのよね。しかも夕方のラッシュアワー時、ロンドンの地下鉄は60パーセントほど運行しなくなりました。
 ちなみに、お隣いつもの仲がいいんだか悪いんだかわかんない競争国フランスでは「そういうことは絶対にありえない、なぜならば電力は公共の運営で、アメリカみたく私営目的でやってるんじゃないから」とフランス人がえらそうに言い切っていたようです。
 わたしがおもしろ~い!と思ったのは、それが起こったあとのイギリス人の反応。だいたい普段から地下鉄のストライキ、爆弾テロ騒ぎ、駅のエレベータ(リフト)の故障、とたいていの「動かない」ことには慣らされておりますからね。
 夕暮れの暗くなる時間帯、明りが突然、消える。真っ暗な闇となり、地下鉄が突然止まる。動かない。リフト(エレベータ)も止まってしまう。ロンドンの地下鉄は地上と駅構内のプラットフォームをつなぐのに、リフトしかない駅もある。
 ニューヨーカーたちはそのとき、歩いてえんえん、橋を渡り、2時間以上かけて家路に帰りついた。路上や美術館、ホテルの前で暗い夜をすごすひともいた。ということでした。
 さて、ロンドナーたちはどうしたか?
 正解)パブに行く。
 駅の近くのパブはいつもより増して客の入りがよく、もうかって喜んだそうですよ。
 パブというのはいまさら説明するまでもないが、いわゆるイギリスの居酒屋です。居酒屋と言いましても、日本のそれのように、おつまみがあって食事もできる、というところとはちと違います。一日中、食事を出すパブも中にはありますが、イギリス人はつまみをとらず、おもに、飲むだけ。えんえん友人やパブで知り合ったひとたちとしゃべったり語りながら、エールとよばれる栄養満点、滋養強壮のビタービールやラガービールなどを飲む。
 やっぱり、イギリスよね。
 地下鉄が止まっていて、駅が閉鎖され、その横でビール飲んでる人だかりがあるパブの風景。
 それを夜のニュースでやっていたので、思わずこれやあ、と笑ってしまいました。
 怒りもせず、「ま、しゃーないな、地下鉄が通常通りに戻るまでのあいだ、ひとパイント、いきましょうか」ってなもんで、イギリス人気質でしょうなあ。これ。やはり。パブがあってよかったね、ってとこ?
 まじめな日本人は居酒屋が近くにあっても、タクシなり、社用車なりで、必死になって家路を急ぐでしょうね?偏見?これ。
 さて、その日、わたしは幸か不幸か風邪をひいてダウンしており、会社に行かなかったのでこの珍事に巻き込まれることなくすみました。体調が悪いのはわたしにとってはめずらしいことなんだが無理して会社に行っていたら、スムーズに家に帰れず、パブに行って酒を飲む気にもなれず、早く帰りたいのになかなか家路につかぬ、とて、また歩いて帰っていたかも。ま、今回は雪も氷もないので、ふつうに歩いて帰ることは可能だったとは思いますがね。ははは。風邪ひいて得した唯一の体験。得でもないかあ。

2003年9月5日                 
© Mizuho Kubo , All rights reserved…..September, 2003

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